鬼を殺し人間の生活を守る集団・鬼殺隊。
産屋敷輝哉(うぶやしき かがや)はその鬼殺隊の中でも最も位の高い9名の剣士・柱を従え、鬼舞辻無惨を殺すという一族の悲願を背負った男です。
若くして病に苦しみながらも、部下を心から愛し続け、痛む体に鞭を打って支えてきました。
そうして柱をずっとまとめあげてきましたが、最後は自爆(ネットで”産屋敷ボンバー””お館様ボンバー”と呼称されます)という・・・強烈にして壮絶な死を迎えます。
そこには並々ならぬ執念と覚悟があるように感じました。
どうして産屋敷輝哉は、妻や二人の娘を犠牲にしてまで鬼舞辻無惨を倒すことにこだわったのでしょう。
産屋敷輝哉のこれまでの経歴をもとに深堀りしていこうと思います。
産屋敷ボンバーの裏には狂気を感じるほど緻密な計画が
産屋敷輝哉は余命いくばくもない自分を囮に使い、ラスボス・鬼舞辻無惨をおびき寄せます。
目の前に現れた鬼舞辻無惨に動揺せず、たんたんと話をする産屋敷輝哉。
産屋敷輝哉の言葉に、奇妙な懐かしさや安堵感を感じて鬼舞辻無惨は周囲の状況に疑問に思っていた。
屋敷には四人しか人間がいない。逆に言えば、四人も人間がいる。
その四人は、産屋敷輝哉とその妻、そして二人の娘。
産屋敷輝哉は、鬼舞辻無惨の夢は「(本人の肉体的な)不滅」だと言い当てるも、それは叶わないと言う。
なぜなら「人の”想い”こそが不滅」だから。その”想い”を踏みにじった君は決して許されない・・・と、自分の部下を思い浮かべながら訴える。
そして・・・
鬼舞辻無惨を巻き込みながら、四人は爆発によって死亡します。
自分たちの命をもって、鬼舞辻無惨に攻撃をする隙を作るために……。
その隙をついて、
珠世様が”鬼を人間に戻す薬”を鬼舞辻無惨の体に打ち込み、
身動きを封じているところに岩柱・悲鳴嶼行冥が現れ必殺の攻撃をぶつけました。
しかし鬼舞辻無惨の体は再生を始める。
そこに他の柱もすぐに集まり、一斉に攻撃をしかける!
ついに最終決戦が幕を開ける!!
自分も家族も死ぬことを加味した作戦だった…!
これは全て産屋敷輝哉の計画通り。
- 自分のことは直接殺しに来るだろうと先読みし、珠世の高度な科学医療で時間を稼ぐ。
- そして最も信頼する柱にだけ作戦を伝え、爆発直後の奇襲をお願いする。
- さらには鬼舞辻無惨は日光でしか倒せないことも読んでおり、他の柱も召集させ朝日が昇るまで全員で時間を稼ぐ
・・・という徹底ぶり。
さすが鬼殺隊の当主だと思われますね。
これまで鬼に居所がバレなかったのも、きっと産屋敷輝哉のおかげだったのでしょう。
ここでのシーンはさすがの僕も驚きました……!まさか、妻子も一緒に爆発で死ぬなんて。
鬼舞辻無惨が「妻と子供は承知の上だったのか?」と困惑していましたが、まさに同じ気持ちです。
きっと承知の上だったのでしょうけど、すさまじい家族ですね。
鬼舞辻を完全に油断させ、寿命わずかな自分の命を燃やして足止め、そのあとすぐ最大戦力で一気にたたく。
かたきを討つために攻撃力を増す柱たち。
これほどムダのない計画はみたことがありません・・・!
産屋敷輝哉とはいったいどんな人物?
鬼殺隊の当主であり、産屋敷一族の長。
年齢は23歳と若く、その年になる前から現在の柱にあたる人物たちに接触し、心の拠り所として支えていました。
そのため柱からは敬意を込めて”お館様”と呼ばれている。
とても温厚な優しい性格で、隊士のことを心から愛しており、戦死してしまった隊士の墓参りは足腰が立たなくなるまで欠かさず行っていました。墓参りだけでなく、今際の際の隊士のもとに顔を出して励ますなど、家族を亡くした隊士にとって父親同然の存在です。
鬼舞辻無惨のように力で部下を支配しようせず、隊士の心に寄り添うことで結束を高めている。
まさに鬼舞辻無惨の悪いところを剥ぎ取ったような善人です。こんな上司がいたら僕も絶対に尊敬するし、そばに付いていきたくなりますね。
圧倒的なカリスマ
柱の9名はそれぞれ個性的で癖の強いキャラクターばかり。
その柱たちに尊敬されるほど、産屋敷輝哉のカリスマはすごいです。
例えば、柱の中でも最強と言われる”岩柱・悲鳴嶼行冥”も産屋敷輝哉の言葉に救われていました。
「あの方はいつも、その時人が欲しくてやまない言葉をかけてくださる人だった」
きっと他の柱も同じように思っているのでしょう。
圧倒的な力をもつ柱にも、精神的に弱い部分は必ずあります。
その弱さに負けそうになった時、前に進めるよう産屋敷輝哉は導いてきたのでしょうね。
相手がどんな気持ちなのか、どんな言葉を求めているのか、それが分かる人は少ないのではないでしょうか?
人は自分の話を聞いてほしいと思ってしまうものです。
自分を二の次にして、相手の話に耳を傾けるのは意識しても難しい。
それができる産屋敷輝哉は、まさに天性のカリスマ持ちだということでしょう。
産屋敷一族の悲願
産屋敷一族は、あることをきっかけに”呪い”がかけられています。
そのきっかけとは、鬼舞辻無惨を一族から生み出してしまったこと。
当時、「20歳まで生きられない」と宣告されるほど病弱だった鬼舞辻無惨は、ある医者の投与した薬で鬼へと変質します。
それから鬼舞辻無惨は、自分の目的のために多くの人間の命を奪いました。
それが理由で、産屋敷一族の子供はみな病弱で短命になってしまった。
この”呪い”を解くには、鬼舞辻無惨を倒すしかない。
だから産屋敷一族はその想いで鬼舞辻無惨を追い続けている・・・・・・千年以上も。
病の進行を執念で抑える
その呪いは産屋敷輝哉も例外ではなく、若くしてすでに病が進行しています。
とうとう歩くこともできなくなり、産屋敷ボンバーの半年前に「あと数日の命」だと医者に宣告されます。
それでも「鬼舞辻無惨を倒す」という一心で、どうにか生きながらえている。
それがどれほどの覚悟なのか、妻子共々自爆をしたのを考えれば、いまさら想像するまでもありませんね。
鬼舞辻無惨への底なき殺意
産屋敷輝哉は感情の動きがゆるやかな人ですが、炭治郎たちが上弦の陸を倒したという知らせがきたときは珍しく感情が高ぶっていました。
「お前は必ず私たちが私の代で倒す」
苦しくて血反吐を吐いても、産屋敷輝哉は気持ちを抑えられない。
これまで表に出してこなかった「鬼舞辻無惨を倒す」という執念が溢れ出ていて、僕は少し狂気を感じました。
優しい心と、鬼舞辻無惨への憎悪が同居しているんだなと。
炭治郎と禰豆子が生み出した波紋
上弦の鬼は百年もの間ずっと変わらず、何人もの剣士が殺されてきました。
炎柱・煉獄さんも猗窩座に殺されてしまいましたし、条件が悪ければ柱でも負けてしまうことが分かりますね。
その柱でも敵わない上弦を百年ぶりに倒したことが、”兆し”だと産屋敷輝哉は言っていました。
その兆しを作り出したのが、炭治郎と禰豆子。
炭治郎は始まりの呼吸・日の呼吸を継承し、禰豆子は鬼でありながら鬼舞辻無惨の呪いだけでなく太陽まで克服した。
二人が産屋敷一族の呪いを解いてくれる展開が、いつかくるのでしょうか……。
産屋敷耀哉の能力
自分も戦おう、とみずから剣を習ったこともあるお館様。
才能がないため断念しましたが、リーダーとしては・・・彼の、また一族特有の別の能力のほうが、適切だと悟ったのでしょう。
それも強烈すぎる能力。
稀有な声質
産屋敷輝哉の声音や動作の律動は、話す相手を心地よくさせ、聞く者に安らぎと高揚感を与えます。
それを現代の言葉で”1/f”揺らぎ(えふぶんのいちゆらぎ)と言って、カリスマ性があり大衆を動かす力を持つのものはこの能力を備えている場合が多いそうです。
たしかに、お館様にぴったりの能力ですよね。
ちなみに、実際この声質を持っていた有名人といえば故・美空ひばりさん。彼女が「昭和の歌姫」と呼ばれた理由の一つなんですね。
直感
またお館様にはもう一つ凄まじい能力があります。
それが”直感”です。
この能力はお館様特有のものではなく、産屋敷一族特有のものらしいです。
この直感を”先見の明”とも言って、未来を見通すことができる。この能力によって産屋敷一族は財を成し、幾度もの危機を回避してきました。
そして、この能力があったからこそ、鬼舞辻無惨の襲撃を予測し、決死の作戦を立てることができたということですね。
まとめ
一族の悲願を果たすため、自分はおろか妻や娘をも犠牲にした産屋敷輝哉。
それが道徳的に良いことかはさておき、それだけの覚悟と宿命を背負っていたことが痛いほど伝わってきます。
鬼舞辻無惨への怒りと憎しみを胸のうちに隠し、奇襲を成功させた産屋敷輝哉の恐ろしさは作中でもトップクラスでしょうね。
彼の死が無駄にならないように、炭治郎たちに頑張ってほしいです……!!!